整理収納アドバイザーの資格を活かし、片付けコラムニストとして活動している藤野ことと申します。
最近はユーキャンのテレビCMで「整理収納アドバイザー」の資格にチャレンジするタレントさんを見て、この資格を知った人も多いのでは?
資格名のとおり、家を片付けてくれるなんだろうなと想像できますが、
- 「実際、整理収納アドバイザーってどんなことをしているの?」
- 「依頼したら本当に部屋が片付くの?」
- 「片付けが得意だから資格に興味があるけど、整理収納アドバイザーになるにはどうすればいいの?」
といった疑問もあるのではないかと思います。
今回は、こういった整理収納アドバイザーに関する疑問に自分の経験も交えながらお答えしていきます。
実は、私はライターになってから整理収納アドバイザー1級の資格を取得しました。最初から片付けのプロになりたい!と思っていたわけではありません。どちらかというと変わり種の整理収納アドバイザーになります。
そこで、ライターの私だから感じる整理収納アドバイザーが求められていることについても考えてみました。
整理収納アドバイザーとはどんなお仕事?
まずは整理収納アドバイザーとはどんな資格で、どんな仕事をしているのかを説明します。片付けを依頼してみたい人向けに、ちょっとだけ整理収納サービスについてもお伝えしますね。
ハウスキーピング協会が運営している民間資格
整理収納アドバイザーとは、ハウスキーピング協会が運営する民間の資格です。1〜3級まであり、3級と2級では整理の基本的な考え方や収納のコツを学べます。
整理収納アドバイザーと名乗って仕事ができるのは1級保有者だけです。とはいえ、民間資格なので特別な縛りはありません。実際、整理収納アドバイザー1級の資格を持っていなくても、ほかの資格や経験を生かして片付けのプロとして活躍している方はたくさんいます。
片付けの資格は、ほかにも「整理収納教育士」「こんまり®︎流片づけコンサルタント」「ライフオーガナイザー」「生前整理アドバイザー」など20種類以上もあります。
その中でも整理収納アドバイザーはメジャーな資格の1つです。整理収納アドバイザー1級を取得しているかどうかは、片付けのプロである判断基準の1つと考えてください。
実際に整理収納アドバイザーとして活躍している人はどんなことをしているの?
整理収納アドバイザー1級を取得した人は、片付けのプロとして仕事ができます。
実は世界的に有名な「こんまり」こと近藤麻里恵さんも整理収納アドバイザーの資格保有者なんです。そこからご自分で片付けの協会をつくり、現在に至ります。
整理収納アドバイザーの仕事は多岐にわたりますが、主な仕事内容を紹介すると以下のようなものが挙げられます。
- 個人向け整理収納サービス(訪問、オンライン)
- 企業向け整理収納コンサルティング
- 家事代行(片付けのプロとして登録)
- 片付けに関するセミナー講師
- ライター・ブロガー
- 片付けジャンルのSNSインフルエンサー
大きく分けると、実際に現場に出てお客様の部屋を片付ける実践タイプと、講座や記事・SNSなどを通じて情報を発信するタイプがあります。両方おこなっている人もいます。
しかし、残念ながら資格を取ったにもかかわらず「何もしていない」という人も少なからずいるのが現実…
自分がどんな整理収納アドバイザーになりたいのか、しっかりとしたビジョンを持っている人が活躍しているように思います。
整理収納アドバイザーに片付けを依頼するとどうなる?
- 「自分ではどこから片付けを始めたらいいのかわからない…」
- 「家を片付けたくても時間がない」
- 「そもそも片付けが苦手で、つい後回しにしてしまう」
片付けなんてやろうと思えば自分でできること! それなのに、お金を払って人に頼むなんて… と考えて頑張って自力でやろうとしても、自分ができないことや苦手なことはなかなか進みません。結局、片付けられない自分を責めることになってしまいます。
ですから、片付けに限らず、どんなことでもプロに頼んでみるのがおすすめです。プロのやり方を見ることでたくさんの気づきが得られます。それに一度お部屋がリセットされれば、気持ちもスッキリするでしょう。
個人向けの整理収納サービスは、事前にお客様の片付けの悩みやライフスタイルなどをヒアリングし、その人に合った収納プランを提案したり、実際に自宅を訪問して片付けたりするのが主な仕事内容です。
- 個人宅に訪問して整理収納作業
- 引っ越し前の整理、引っ越し後の収納作業
- オンラインでお部屋を見せてもらいながら、片付けのアドバイス
などをおこなっています。
整理収納アドバイザー=”モノを捨てる人”と思っている人も多いようですが、それは誤解です。積極的に「捨ててください」と促す整理収納アドバイザーはほとんどいません。
私が知る限り、整理収納アドバイザーに依頼して「大切なモノまで捨てられてしまった」なんて話は聞いたことがありませんから、安心して片付けの依頼をしてください。
大切なのは、何を捨てるかではなく「何を残すか」。モノと向き合い、残したいモノを選ぶ作業、つまり整理から始めていきます。モノの整理が終わったら、その人に合った収納方法を提案し、片付けていきます。
あるモノすべてを、いきなりパズルのようにピッタリ収納していくわけではありません。スペースに入りきらない量のモノを決められたスペースに収納する魔法はないのです。
整理アドバイザーでも収納アドバイザーでもなく、整理収納アドバイザーたる所以はそこにあります。
整理収納アドバイザーに片付けを依頼すれば、お部屋が片付くのはもちろんのこと、モノの持ち方や買い物の仕方などにも変化が出てきます。
「片付けで人生が変わった」とまでおっしゃる方もいますので、片付けの効果は絶大です。
「でも、片付けを依頼したら高いんでしょう?」と依頼に踏み切れない方も多いかもしれませんね。
整理収納アドバイザーによる片付けの訪問サービスの料金は、1時間3,000〜7,000円と実績や知名度で幅がありますが、おおよその相場は1時間5,000円です。ヒアリング後に、作業時間を計算して見積もりを出すので、かかる料金はわかりやすいでしょう。
この相場を目安に、予算に合った整理収納アドバイザーを選ぶと不満が起こりにくくなります。近隣に住む整理収納アドバイザーを検索すると、ブログやホームページに料金が掲載されているのでチェックしてから申し込むと安心です。
この金額を高いと思うかどうかは、「家が片付く」ことにどれだけの価値があると考えているかに尽きます。ずっと片付かない家に住んでモヤモヤして暮らすか、お金を払ってスッキリとした暮らしをするか、選ぶのは「自分」の気持ちしだいです。
整理収納アドバイザーの資格を取得するメリット
片付けが苦手でも、整理収納アドバイザーの資格を取れば片付けができるようになるのでは?と考えた人もいるかもしれませんね。まさに私がそのタイプでした。
2017年に整理収納アドバイザー2級を取得しましたが、家を片付けられるようになるために資格を取ったに過ぎません。まさか2年後に1級を取得するとは思ってもいませんでした。
そんな私が整理収納アドバイザー1級まで取ったのは、それだけメリットがあると感じたからなのです。
ここでは、自分にとってどんなメリットがあったのかをお伝えします。
整理収納の基本がわかる
見た目はスッキリしていて、「いつもキレイにしているね」と言われていたわが家。
ところが棚や引き出しの中はぐちゃぐちゃで、いつも探し物をしていました。要するに見た目だけがまともだったのです。
その原因は「片付け方を知らなかった」から。今でこそ小学校の家庭科で片付けについて習いますが、十数年前までは身近に片付けを教えてくれる人はいませんでした。親には「片付けなさい」と言われただけで、片付けの方法を教えてもらった記憶はありません。そういう方は、とても多いのではないでしょうか。
だから見た目がキレイならOKとさえ思っていました。
でも、とにかくモノが多くて暮らしにくい!
そんなときに知ったのが整理収納アドバイザーという資格でした。2級認定講座を受講してみると、目から鱗なことばかり。
この図は整理収納のピラミッドです。自分が頑張っていたのは「片付け」で、「整理」も「収納」もできていないことに気づきました。その「片付け」さえもやり方を間違えていたのです。とうてい掃除に行き着くはずがありません。
整理収納の基本を知らないまま過ごしていたら、きっと今も乱雑な部屋に住み、ストレスの多い生活をしていたことでしょう。
「整理収納の基本を知る」ことは非常に大切なのだと実感しました。片付けの仕事をするつもりはなくても、整理収納アドバイザー2級を取得するのは人生において無駄になることはないと思います。
とはいえ、本当に家が片付くかどうかは、その人のやる気しだいですが…
家事がラクになる
整理収納の基本がわかると、これまで自分がいかに探し物が多かったか、家事で無駄な動きをしていたかに気づけます。
「使う場所に使うモノを収納する」
これがポイントです。
料理・洗濯・掃除といった主な家事も、ゴミ袋のセッティングや郵便物の仕分けのような名もなき家事も、片付けによってできる時短はわずか数秒・数分かもしれません。
ですが、トータルで考えると数十分、もしかしたら1時間以上もの家事時間を減らせることになります。
主婦歴25年以上で決して手際は悪くないと思っていた私ですが、片付けができていないことでいかに時間を無駄にしていたのかを実感しました。整理収納の基本を理解して実践すれば、家事動線が短くなり家事がラクになるのです。
1級を取得すれば片付けのプロとして仕事ができる
ライターとして仕事を始めたものの、長年専業主婦をしていた自分には何の強みもないと思っていました。
ですが、さまざまなジャンルの執筆をしていく中で、片付けや家事に関する記事を書くのが楽しいと感じるようになりました。私の強みは「専業主婦の頃に培った家事スキル」だと気づいたのです。
そこで整理収納アドバイザー1級を取得して、専門性を高めることにしました。
1級を取得すれば、実際に片付けの現場で仕事もできますし、片付けセミナーも「整理収納アドバイザー」と名乗って講師として開催できます。
私の場合、普段は「片付けコラムニスト」として執筆業を営んでいますが、片付けの相談を受けたりセミナーを開催したりもするようになり、活動の幅がグンと広がりました。
ライターとしての整理収納アドバイザーが求められるもの
私はライターですから、ブロガーやSNSのインフルエンサーの方々と違い、自分が好きなことを好きなように書けるわけではありません。
クライアント、そしてその先の読者のことまで考えて執筆をしているので、まずは「読まれる内容」でなければならないからです。
この場を通して、ライター目線でなく整理収納アドバイザー目線の本音、つまり読者のニーズと自分が伝えたいことには多少のズレがあることを書かせてください。
収納グッズや収納テクニックは最後でいい
記事としてよく読まれるのは、便利な収納グッズや100均などの商品を使った収納テクニックです。いわゆる「バズる」収納記事には欠かせない要素となっています。
ですが、記事に書かれた収納グッズや収納テクニックを使ったからといって、必ずしも家が片付くわけではありません。
なぜなら家族構成やライフスタイル、間取りなど条件が同じ家はどこにもないからです。その家の片付けの最適解は、その家によって違います。
「あの記事に『この収納グッズが便利!』と書いてあったのに、全然使えなかった」という話を聞いたことはありませんか?
収納グッズや収納テクニックは、「整理」ができている前提での解決策です。「収納」の記事を読んで真似したのに悩みが解決しなかった理由はそこにあります。
もちろん試してみるのは重要です。
実際、とある収納グッズの紹介記事を書いたときに「今まで何を試してもうまくいかなかったのですが、紹介してくれた収納グッズのおかげで問題が解決しました」と感想をもらったことはあります。
でも、これはほんの一握りの成功例に過ぎません。
収納グッズを買うのは、モノの整理をして指定席を決めてから。片付けの中で順番としては一番最後です。
本当に大切なのは「整理」
読者に限らず、実際に片付けサポートで訪問するお客様も、最初に整理収納アドバイザーに求めているのは「たくさんあるモノをいかにパズルのようにピッタリ収納するか」です。
けれども、本当に大切なのはモノと真剣に向き合い「整理する」こと。整理とは「不必要なモノを取り除く」ことですが、決してモノを捨てることではありません。自分にとって残したいモノ、必要なモノを選ぶ作業です。
サポートのお客様には整理の大切さを直接お伝えすれば理解してもらえますが、読者の方々にはそういうわけにもいきません。どうしても「最終的な答え」=収納グッズや収納テクニックを伝えることに偏ってしまいます。
ライターの私がこんなことを書いていいのかわかりませんが、記事の内容は解決策の1つであって「あなたにとっての正解とは限らない」ことを念頭に入れて読んでもらえればと思っています。
片付けは暮らしに重要なスキル! 資格があって損はない
実は整理収納アドバイザーも、自分の家の片付けには試行錯誤しています。暮らしやすさを追求して、失敗を繰り返した結果として「今」があるのです。とはいえ、年数が経てばライフステージもライフスタイルも変わりますから、収納方法も「今」に合わせて変えていかなければなりません。
片付けは人生において非常に重要なスキルです。
もちろん、どうしても自分に片付けは向いていないと感じる方もいるでしょう。その場合は、整理収納アドバイザーに片付けを依頼すれば個々のお悩みを解決できるので無理する必要はありません。
ですが、一生もののスキルとして整理収納アドバイザーの資格を取ってみるのも、決して損はないと思います。
家が整えば、暮らしも心も整う。
整理収納アドバイザーですが、いつか誰も整理収納アドバイザーを必要としなくなる世の中になればいいなと思っています。それは、誰もが片付けができるようになり、毎日を快適に過ごせる明るい未来がやってきた証拠ですから。
まわりの整理収納アドバイザー仲間とも「片付けでみんなを笑顔にしたい」と話しています。
これを機に整理収納アドバイザーへの理解を深め、片付けについて真剣に考えていただけるとうれしいです。
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
この記事を書いた人
整理収納アドバイザー、住宅収納スペシャリスト。片付けコラムニストとして片付けや時短家事についての記事を多数執筆。「家事は素早くラクに」がモットー。生活動線を短くして家事がラクになる仕組みづくりを考えるのが得意。個人・企業向けに片付けのコンサルティングも手がけている。フランス語翻訳家としても活動し、翻訳本には『feel FRANCE100〜写真と言葉で感じるフランスの暮らしとスタイル』などがある。