海外マーケットに進出するにあたり、SEO対策は重要な施策のひとつです。しかし、海外で英語SEOを成功させるには、国内SEOとの違いや注意点を理解しなければいけません。特に、初めての海外進出では、言語や文化の違いを理解していないことによりターゲットに向けて効果的なコンテンツを作れていないということが起こります。

今回は、日本国内とカナダのデジタルマーケティングエージェンシーにてSEOマーケターとして働く経験があり、年間200本以上英語コンテンツを制作する筆者が、英語SEOと国内SEOの違いを解説します。

また、現在フリーランスとして日本企業へ英語SEOコンテンツ制作を行う中で、よく聞かれる質問を注意点とともに説明していきます。初めての海外SEOを検討している方はぜひ参考にしてください。


英語SEOと国内SEOの違い

英語SEOと国内SEOの違いは大きく次の3つです。

  • 言語と文化
  • 検索エンジンの利用傾向
  • ドメインやURL

特に、言語と文化の違いやターゲットのニーズを理解することは、SEOだけではなく海外マーケティングにおいてとても重要であり、深い調査が必要です。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

ターゲット市場の言語と文化

英語SEOと日本国内向けSEOとの大きな違いは、使用言語と文化です。

SEOにとってキーワード調査とニーズに沿ったコンテンツ作りはとても重要です。そして、SEOキーワードや作るべきコンテンツは言語や文化によって異なるため、ターゲット国に合わせた言語とロケーション設定で調査する必要があります。

Google キーワードプランナーやahrefs, SemrushなどのSEO調査ツールではターゲット言語とロケーションを設定できるので、調査時には変更しておきましょう。

国によっては公用語が複数あり、地域によって使用言語が異なる国もあるので注意してください。例えば、世界展開している「UNIQLO」のWebサイトを見てみると、カナダでは英語とフランス語、ベルギーではオランダ語、フランス語、英語で言語を切り替えられるようになっています。

また、文化の違いを知ることも大切です。例えば、日本の家では浴槽がついているのが一般的ですが、北米では浴槽につかる文化があまりなく、シャワーしかついていない物件も多いというように、常識が全く異なるのは珍しくありません。そうなると、バス用品を扱っている企業では、入浴剤はその他の商品に比べてニーズが低い可能性があります。

まずは、ターゲット国で使用されている言語、そして文化の面も深く調査しておきましょう。

検索エンジンの利用傾向

検索エンジンの利用傾向は国によって異なるため、ターゲット市場にて主に使用されている検索エンジンは事前に確認しておきましょう。

例えば、日本ではGoogleとYahooが主に使用されていますが、中国ではBaido(百度)、ロシアではYANDEXが主に使用されています。

検索エンジンのマーケットシェアを確認するのに私が使用しているサイトは、statcounterです。

Googleであれば使用しているアルゴリズムは同じなのでSEO施策に違いはありません。

ドメインやURL

Googleではユーザーの地域によって検索結果がカスタマイズされるため、英語SEOを行う際にはどの国に向けたコンテンツなのかGoogleに知ってもらう必要があります。

Googleが推奨しているのは各言語のバージョンに異なるURLを使用することです。

例えば、国別コードトップレベルドメインである「.jp」を使用している場合には、一般的なキーワードではターゲット国の国別コードトップレベルドメイン(カナダであれば「.ca」)もしくはジェネリックトップレベルドメインである「.com」の方が表示されやすい傾向にあります。ただし、私の経験上では「kimono rental tokyo」など日本に関連しているキーワードであれば「.jp」でも問題なく表示されます。

とにかく英語コンテンツを量産することにフォーカスしている企業も多いですが、テクニカルSEOも重要な要素のひとつです。

社内にテクニカルSEOの知見がない場合には、SEO業者に相談するのが良いでしょう。

英語SEOに関するよくある質問

ここでは、私が英語SEOを行うにあたってクライアントからいただく質問や初めての海外SEOで陥りがちな勘違いを紹介していきます。

日本語でのSEOに関して知見がある方も最近は増えていますが、そういった方でも英語SEOに関しては次のような見落としが多いようです。

既存の記事を翻訳しても良い?

これは特に国内SEOを行っている企業が陥りがちな落とし穴です。

海外向けSEOコンテンツを作る際に、既存記事を翻訳して使用したいと言われることがありますが、あまりおすすめしません。

先述しているように、言語によってSEOキーワードやニーズが異なるため、日本語コンテンツをそのまま翻訳してしまうと現地の検索ニーズに合わず、結局SEO効果が出ないケースが多いです。よくあるのが、英語でのキーワード調査をせずにただ翻訳した際に、英語で該当するSEOキーワードがないというケースです。そもそもキーワードの需要が全くないということになります。

例えば、「ほうじ茶 妊娠中」というキーワードを翻訳すると「hojicha pregnancy」となりますが、英語では検索ボリュームがありません。SEOを意識した記事にするのであれば「hojicha caffeine content」や「roasted green tea benefit」など、英語での検索ニーズに合わせて調整する必要があります。

また、日本語独特の表現を使用している場合には翻訳すると意味が全く通じないこともあります。

現地の検索ニーズに合う日本語コンテンツがある場合には、翻訳ではなく参考文として既存記事を使用できますが、基本的にはターゲット国に合わせて新しい記事を作るのがベストです。

生成AIを使用して記事を作っても良い?

生成AIは驚くほど進化しており、クオリティも上がってきています。私も毎日お世話になっていますが、100%信用してはいけません。

海外コンテンツであっても国内コンテンツであっても、生成AIにコンテンツを作ってもらうのであれば、ファクトチェック、ネイティブチェックは(できれば編集も)必要です。

日本語の記事を翻訳する場合も、ネイティブにチェックしてもらうと表現に不自然であったり、言い回しのニュアンスに違和感があったりで意味が通じない箇所があり、ほぼ100%の確率で修正が発生しています。今後のAIの発展により状況が変わる可能性がありますが、現時点では100%をAIに頼るのではなく、切り口を考えるアイデア出しなど、部分的に活用することをおすすめします。

英語コンテンツは国ごとに使い分けるべき?

同じ英語コンテンツだからといってコンテンツを使い回すのはおすすめできません。

国によって使用している英語は違うので、第一言語が英語の国であればネイティブ英語を使用してコンテンツを作るのがベストです。

英語が第二言語の国であれば、大きく分けてイギリス英語とアメリカ英語のどちらかが使われています。例えば、インドであればイギリス英語、フィリピンであればアメリカ英語が使用されており、ターゲット国で使用されている英語に合わせてコンテンツを作ります。

同じアメリカ英語だからといってアメリカとフィリピンで同じコンテンツを使用できるかという問題では、多くの場合はターゲット国の文化やトレンドによって各国で作り分ける必要があるでしょう。

記事のアップデートやリライトは必要?

日本国内のSEOコンテンツ同様、海外向けコンテンツでも記事のアップデートも忘れてはいけません。

成果を出すためには、記事製作のみでなくアナリティクス解析やレポート作成、リライトも含めて長期で運営サポートしてくれる業者を選択するのがおすすめです。

海外SEO業者の選び方は?

海外SEO業者は、海外拠点がある、海外のデジタルマーケティングエージェンシーと提携している、ネイティブスタッフが社内にいる業者が安心です。ただし、業者の中には翻訳のみの場合もあるので注意が必要です。

SEOを得意としており、ターゲット市場のマーケティング調査から行ってくれる業者がおすすめです。

また、ターゲット国のSEO実績があるかどうかも確認しておくと良いでしょう。ターゲットとしている国の実績がない場合でも、幅広い国で実績がある場合には信頼できる業者といえます。

海外でも専門性の高い記事を作るには?

海外で専門性の高い記事やYLYM(Your Money or Your Life)関連を作りたい場合、日本国内のSEO同様に専門家に記事を書いてもらう、監修をつける、自社オリジナルの一次情報のみ記載するなどの対策が必要です。

このような記事を依頼する場合には、業者がどのように対応してくれるのか事前に確認しておきましょう。

英語が分からないので記事制作の流れやチェックが不安

日本国内企業向けサービスを提供している場合には、バイリンガル日本人がディレクションし、ネイティブスタッフが執筆するのが一般的です。そのため、ほとんどの場合でやり取りなどは日本語で対応してくれます。

日本語で構成・文章確認をしたい場合にはその旨を伝え、対応可能かどうか確認しておくと安心です。

まとめ

海外SEOでは、国内SEOである程度の成果を上げている企業ほど「このコンテンツがPVやコンバージョンを取れる」と思い込みやすく、海外ニーズに適していないコンテンツを量産してしまいがちです。

特に初めて海外SEOを行う場合には、知見のある業者に依頼するのが安心でしょう。

海外SEOにおいても、ユーザーファーストでコンテンツを作るというのは同じです。まずはしっかりと調査し、ターゲットとなる国言語や文化を理解して、ユーザーニーズに寄り添った記事を制作してください。


※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。

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