「インフルエンサーにはなりたくてなったわけではないんです」と話すのは、整理収納アドバイザーでインスタグラムのフォロワー数27万人(2023年5月現在)の大人気インスタグラマーのぴょりさん。
オリジナリティあふれる投稿で「わかりやすくて、私にもできそう」「とても参考になる」とファンが激増中です。
元汚部屋住人だったというぴょりさんが、汚部屋とは対極にあるミニマリストやシンプルライフについてどう考えているのかを聞いてみたくなりお願いしたところ、今回のインタビューを快諾いただきました。
筆者は、ぴょりさんとは整理収納アドバイザー1級取得時の同期です。瞬く間に活躍される姿を見て「すごいなぁ」と羨望にも似た気持ちを抱いていました。
しかし、今回お話を聞いてみて知ったのは、さまざまな葛藤を繰り返した上での「今」があること、ここまでの道のりは決して楽なものではなかったことでした。
ぴょりさんの成功は「努力」にあり。決してラッキーだったというわけではありません。インフルエンサーなりの苦労があることも、話を聞くまで筆者にはわかっていませんでした。
ぴょりさんは、顔出しもせず、本名も公表していません。にもかかわらず、ここまで活躍しているのは、どうしてなのでしょうか?
今回は、インスタグラムで大人気となり、整理収納アドバイザーとしても活動の場を広げているぴょりさんに、ここまでの苦労やこれからの展望を伺いました。
(インタビュアー:藤野こと)
ぴょりさんはこんな人
整理収納で2,000万円の節約に成功した元汚部屋住人が話題となり、フォロワー数27万人超えの大人気インスタグラマー。元看護師で2児のママ。夫と子どもの4人で一戸建て暮らし。整理収納アドバイザーとして、さまざまな整理収納の情報発信をしている。最近では、企業とのコラボ商品の販売やリアルやオンラインでの片付けセミナーの開催など、活躍は多方面に渡る。
汚部屋住人が「ヤバい!」と自覚したのは整理収納アドバイザーのインスタグラム投稿を見たこと
―― 前職は看護師で、そこから整理収納アドバイザーになったそうですね。まったく違う分野にチャレンジしようと思ったきっかけは?
家を建てることになったのがきっかけです。それまでは汚部屋住人で、とにかくモノが多くて、散らかった部屋に住んでいました。
看護師という職業は、そこそこお給料がもらえる仕事なんですけど、とにかく私は買い物が大好きで、お給料のほとんどを浪費していたんです。
たとえば柔軟剤のストックが何十個もあるのに、ストックがあることを忘れて、また買っちゃうみたいなことを繰り返していました。でも、それが良くないことだと思っていなかったんですね。
そんなときに家を建てることになり、情報収集のために見始めたのがインスタグラムでした。投稿を見ると「整理収納アドバイザー」の資格を持つ人たちが、キレイな部屋に住んでいて、収納も美しくて…私にはものすごい衝撃でした。
そのとき初めて「もしかしてうちの部屋ってヤバい?汚すぎでは?」と自覚したんです。それで、慌てて整理収納アドバイザー2級認定講座を受けに行きました。
―― 整理収納アドバイザー2級を取得してみて、どんなふうに変わりましたか?
何もかもビックリしちゃって…とにかくインパクトが強かったです。
「私、今まで何をしてたんだろう?」って思いました。
実は2級を取る前には、家や土地はもちろん、すでに住宅ローンはいくらくらいかまで決まっていたんですよ。でも、講座を受けてみたら、家づくりの方向性が間違っていることに気づいてしまって…
私が片付けられないのは、アパートが狭いからだと思っていたのに、そうじゃなかったんです。
新居の間取りは、収納スペースをたっぷりと確保していて、これなら片付くはず!と自信があったんですけど、その考えが根本から覆されてしまいました。
「収納さえあれば片付くという考えは、間違っているんだ」
と気づいて、慌ててすべてを白紙に戻しました。
整理収納が人生を変えた!2,000万円の節約につながった家づくりの見直し
―― 新居を白紙に戻したというのは、設計の変更のことですか?
いやいや、違います。全部です、全部!
土地から白紙に戻したんですよ。明日にも土地の契約書に判を押すくらいのタイミングで受けたのが、整理収納アドバイザー2級認定講座でした。
そこから家づくりを見直して、結果的に想定よりも2,000万円も安く家が建てられたんです。
―― 具体的にはどんなところを削っていったのですか?
家の設備にはあれをつけよう、収納はここにもつけようと思っていたものを削ぎ落としていきました。
そうしたら、単純に「こんなに広い土地はいらないよね。坪数がありすぎる」と気づいて、もっと狭い土地を探すことにしたんです。
当然、狭くなった分だけ土地代は安くなりますよね。さらに、家の設備や収納を減らして、オプションも必要なものだけにしたら、トータルで2,000万円もの節約になったというわけです。
2,000万円ですよ!すごくないですか?
今後のローンや生活費、子どもの教育費を考えたら、2,000万円は本当に人生が変わるレベルの金額。それが整理収納で節約できちゃったんですよ。
整理収納アドバイザー2級認定講座を受講しただけで、ここまで人生が変わるなんて思いもしなくて…
あまりのインパクトに「もう整理収納アドバイザー1級まで取ってしまおう」「もっと整理収納について知ったほうがいい」と思ったんです。
そのときは、すでに上の子を妊娠中で「今しかない!」という気持ちもありました。
妊娠中に取得した整理収納の資格はなんと8つ!
―― 整理収納アドバイザー1級試験のときにお腹の大きな妊婦さんがいたなんて、本当にビックリです。当時(2019年)はリアルでの試験しかなかったから大変でしたね
そうなんですよ。
整理収納アドバイザー2級まで取ったなら、整理収納に関する資格は取れるだけ取っちゃおうって考えたんですね。私、コンプリート癖があるので(笑)
子どもが生まれたらリアル参加は難しいし、勉強する時間もなくなると思って、とにかく資格を取りまくりました。
―― 具体的にはどんな資格を取ったんでしょう?
全部で8つ取りました。
- 整理収納アドバイザー2級
- 整理収納アドバイザー準1級、1級
- ルームスタイリスト2級、1級、プロ
- クリンネスト2級、1級
―― 短期間でこれだけ一気に取ったんですね。すごい!ほかに持っている資格はどんなものがありますか?
もともと持っていたのは、看護師と調理師。キャリアカウンセラーという資格もあります。
出産後は、整理収納関連の資格をさらに取りました。
- 北欧式整理収納プランナー
- 整理収納教育士
- 住宅収納スペシャリスト
- 介護環境整理アドバイザー
- 衣類収納アドバイザー
これくらいかな。
今は、さらに上位資格の講座を受講中です。
―― コンプリート癖があるとはいえ、ここまで極めるなんて!脱帽です。これだけ資格を取ったということは、最初から片付けを仕事にしようと思って受講したんですか?
まったく思っていなかったんですよ。つわりがあって休職していたんですが、産後は看護師に復職するつもりでした。仕事も好きだったし。
それが、いつの間にかこんなことになっていました(笑)
片付けを仕事にするようになったのは家づくりの発信をインスタグラムで始めたことがきっかけ
―― 資格をコンプリートするにしても、片付けのプロとしてやっていく気はなかったんですね。それなのに本格的に整理収納アドバイザーとして仕事をしていこうと方向転換したきっかけを教えてください
きっかけは一人目の子どもの産休・育休です。仕事を休んでいたので、インスタグラムで家づくりの投稿を始めました。そこから徐々にフォロワーさんが増え始めて、家の引き渡し時には2,500人くらいのフォロワーさんがいました。
今に比べたら少ないんですけど、その頃のほうがDMをたくさんもらっていたんですよ。おそらく返信してくれると思っていたんでしょうね。
家づくりについて、特に間取りやオプションなどの細かい相談がたくさんありました。相談に乗ること自体は好きだからよかったんですが、無料で1,000件くらい受けちゃったんです。
―― えっ!1,000件も無料で相談に乗っていたんですか?
はい…
でも、これをボランティアとして続けるのには限界があると感じて、マネタイズしたほうがいいんじゃないかと思い始めたんです。
そこで、住宅収納スペシャリストの資格を取って、有料でコンサルをするようになりました。このあたりが始まりです。
ただ、整理収納アドバイザーを本業にする気はまだなくて、看護師に戻るつもりでいました。
―― それなのに片付けのプロとしてやっていこうと思ったきっかけは?
子どもが珍しい病気になってしまったからです。もう完治しているから言えるんですけどね。
病気で保育園に入れないかもしれない、復職が危うい!という状況で、どうにかしなければと必死でした。
ちょうどその時期に家づくりのコンサルの仕事が軌道に乗ってきたので、看護師を辞めて、整理収納アドバイザーを本業にしようと決めました。
保育園に行けなくても、在宅なら何とかなるかなと。結局、保育園には行けたんですが、それでも退職届を出しました。
迷走期を経て整理収納アドバイザーとして本格的に始動
―― 最初の頃のインスタグラムの投稿は、家づくりが中心でしたが、最近は収納の投稿が多いですね。そのあたりの心境の変化は?
たしかに以前は家づくり中心の投稿をしていました。
でも、それは4年以上前のこと。今のニーズには合っていない可能性があります。情報としても古いので、需要のある収納の投稿に変えました。
―― 家づくりの投稿から収納に特化した投稿にするまでに試行錯誤はありましたか?
看護師の仕事を辞めたあと、1年くらい迷走期があったんです。何を投稿していいのか迷っていて、適当な投稿をしているだけ。フォロワーさんも14万人くらいでずっと伸び悩んでいました。2021年の秋から2022年の夏くらいまでの1年くらいかな。
もうインフルエンサーをやめたいって、本気で思っていました。
ぴょりとしてではなく、一人の整理収納アドバイザーとして実力をつけて仕事をしたいと思うようになったんです。
そんなときに、整理収納アドバイザー育成講師の大熊千賀先生に出会って「本気講座」を受けることになりました。
その講座の中で、大熊先生の言葉からヒントを得て、インスタグラム投稿の方向性を変えてみたんですよ。
それが2022年の夏のことです。そこから一気に10万人以上もフォロワーさんが増えました。もうビックリです。
大熊先生の一言がなかったら、今の私はなかったかもしれません。
―― つまりインフルエンサーは続けていくということですね?
本当はやめたいと思っています。でも、やめるためには頑張らなきゃいけないっていう現象が起きていて…
ぴょりではない私には何の実績もなくて、お仕事ももらえない。けれども、ぴょりにはお仕事がもらえる。それならば、ぴょりをうまく使っていったほうがいいと考えたんです。
もちろんジレンマはあります。
ぴょりでいることは大変だし、実際の私はそんなに目立ちたくないのに、なりすましも出てくるわけですよ。本当に苦労の連続。だから、インフルエンサーをやめたいという思いは、常に持っています。
―― 活躍している整理収納アドバイザーはほとんどの方が顔出ししていますが、今後も顔出ししないでやっていくんでしょうか?
そうですね。
今後もインターネット上に顔は出しません。もちろんリアルのセミナーや相談では顔出ししますが、告知や開催報告などでは顔写真を一切使わないようにしてもらっています。
顔を出さなくても私にお願いしたいと言ってくださるところとだけ仕事をしていければいいかなと思っています。
フォロワーさんの悩みをヒントに投稿を作成
―― インスタ投稿についてもお話を伺います。数々のヒット投稿があると思いますが、そういうネタやアイデアはどこから浮かんでくるのですか?
ネタ探しって大変なんですよ。最初は自分が困ったことを投稿していたんですけど、家が整っていくうちに、だんだん困らなくなってきちゃって…
だからニトリや無印良品、100円ショップなどに定期的に行って、新商品のチェックをするようになりました。
あと、フォロワーさんからのDMにヒントをもらうこともありますね。
「奥行きがありすぎて収納がうまくできません」みたいな相談のDMがくるんですよ。
そのときにDMで返信してしまったら、その人しか問題が解決しないじゃないですか。でも、投稿すれば27万人のフォロワーさんに届く可能性があるわけです。だから、DMで届いた悩みは、投稿で回答するようにしています。
そうすると、フォロワーさんからは「投稿のおかげで人生が変わりました。発信してくれてありがとうございます」みたいなDMがくるんですね。本当に嬉しいなと思っています。
―― 実は、たまたまぴょりさんのファンの方とオンラインでお話をしたことがあるんです。その方は、ぴょりさんの子どもと年齢が近いせいか共感する投稿が多くて参考になるって言っていたんですね。やっぱり同世代のママたちと同じ目線なのがいいのかなと思っているんですが、フォロワーさんの年齢層ってわかりますか?
9割が25〜39歳の女性ですね。
―― かなり若い世代に集中していますね。特に子育て世代に反響があった投稿はどんなものがありますか?
「整理収納アドバイザー 買ってよかった育児収納5選」はすごく反応がよかったですね。
育児収納っていうのは、あまりやっている人がいないんですよ。競合が少ないから、伸びたんだと思います。5,100いいね、130万リーチくらいあります。
整理や収納って、すごく頭を使うじゃないですか。でも、育児中って全然頭が回らないから、投稿を真似したほうが早いってなるんでしょうね。そういうママたちが保存してくれている気がします。
―― ほかによく見られている投稿はありますか?
「整理収納アドバイザー 収納がレベチ ニトリの掃除グッズ3選」ですね。
ただ掃除グッズを紹介するんじゃなくて、整理収納アドバイザーの着眼点から投稿しました。
商品紹介だけだとネタが被りやすくて、見せ方も一緒になっちゃうんですね。
そこに動画も盛り込みつつ、「掃除グッズも収納が大事だよ」という気づきを入れてみたんです。
これは1.3万いいね、230万リーチを超えてきました。
―― ちょっともう桁がレベチですね。
あとは「整理収納アドバイザー ほぼセリアで買ってよかった冷蔵庫収納5選」もバズりました。
タイトルに小さく「ほぼ」と入っているのは1つだけセリアの商品じゃないものがあるからです。
やっぱり冷蔵庫って悩みが多いんでしょうね。だから、この投稿を保存してセリアに行って、そのまま買えばOK!となるようにしました。こちらは1.9万いいね、300万リーチあります。保存は7万8,000ですね。
―― いや、もう本当にすごいの一言です。
でもね、自分が伝えたい投稿があんまりできていないんですよ。自分がしたい投稿よりも需要のある投稿を優先しているから、モヤモヤすることもよくあります。今は割り切って投稿するようになりましたけどね。
私が好きなことや本当に伝えたいことは、セミナーで話せればいいかなと思っています。投稿では収納の話ばかりしているけど、実は…っていう感じでね。
―― わかります。整理収納アドバイザーにとっては整理>収納だけど、一般の方にとっては収納>整理ですもんね。ところで、ぴょりさんは小さいお子さんがいるなかで、投稿にはどれくらいの時間をかけているのでしょう?
内容によります。構成を考えるだけで2日かかるものもあれば、1~2時間でできるものもあります。今日の午前中(インタビューを受ける前)は2つ作りました。
自分はミニマリストにはなれないけどミニマリストはすごい
―― 片付けやミニマリスト界隈で投稿を参考にしている、または気になっている人っていますか?
誰も参考にしていないし、気になっている人もいません。
―― 本当に一人もいない?
いないですね。仲良くしているミニマリストさんや交流のある整理収納アドバイザーさんはいますが、投稿を参考にすることはありません。無意識にパクっちゃうのも嫌なので(笑)
―― 完全なオリジナル投稿なのですね。たしかに1枚目の色使いやフォントを見ると、すぐにぴょりさんの投稿だとわかります。
でも飽きっぽいので、実はしょっちゅう色を変えたりはしています。印象は似ているかもしれないけど、結構違うんですよ。
―― そうだったんですね。全然気づきませんでした。では最後に、今のぴょりさんはミニマリストですか?モノは多い、少ないどちらでしょう?
モノはそんなに持っていないですね。
でも、仕事柄、モノを買って試さないといけないので量はめちゃくちゃ多くなりがちですが、そのまま所有しないように心がけています。欲しい人がいればあげたり、リサイクルショップに持って行ったり。
仲良しのミニマリストさんは服が6着しかないって言っていて、本当にすごいんですよ。
今でも買い物は好きなので、自分にはそこまでは真似できないですね。
だから、自分はミニマリストにはなれないなぁと思っています。
―― ぴょりさん、貴重なお話をありがとうございました!
筆者後記
前回インタビューしたひでまるさんと同様、インスタグラマーとして活躍するぴょりさんも非常に「勉強熱心な人」でした。大量行動はやって当たり前、いかに多くの人に見てもらうかを研究して投稿をしているからこそ、27万人ものフォロワーさんに支持されているのだと実感しました。
ぴょりさんはとっても気さくで、ざっくばらん。それでいて節度を持って活動していることが、顔出ししていなくても人気がある秘訣なのかもしれませんね。今後のさらなる活躍も楽しみです。
※前回インタビューした「ひでまるさん」の記事はこちら
ひでまるさん(ルームスタイリスト・整理収納アドバイザー)にインタビュー【奇跡の47平米】
instagramのフォロワー数は4万人以上、TikTokなども含めたSNSの総フォロワー数は5万5 ...
※インタビュー実施:2023年4月
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
この記事を書いた人
整理収納アドバイザー、住宅収納スペシャリスト。片付けコラムニストとして片付けや時短家事についての記事を多数執筆。「家事は素早くラクに」がモットー。生活動線を短くして家事がラクになる仕組みづくりを考えるのが得意。個人・企業向けに片付けのコンサルティングも手がけている。フランス語翻訳家としても活動し、翻訳本には『feel FRANCE100〜写真と言葉で感じるフランスの暮らしとスタイル』などがある。